400字の数学 |
高校数学についてよく言われる事柄について400字程度でまとめてみました。
一つの見方として、考えるきっかけになればと思います。
1. 数学とは何か
2. 何のために数学を学ぶのか
3. 数学は本当に必要なのか
4. 数学は難しい
5. 数学の学び方
6. 理解したい数学
7. 楽しい数学
8. 数学は嫌い
9. 数学は工夫しても
10. 高校数学は一般化
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1. 数学とは何か
それは様々な事柄に関し一般的に扱えるように無駄を省き、簡潔な表現で示したものです。つまり、
具体的なことから抽象化されたエッセンスを絞り出し、幅広く使えるようにまとめたものが数学なのです。
それゆえ抽象化された事柄で理解せず、常に具体的なものでないと考えられない人は数学に向いて
いないということです。
よく「具体的に言うと」だとか、「具体例をあげて」とか言うけれども、理解するために具体例で考える
ことはよいけれど具体例から一般的なことへ発展させて数学になるのです。たとえば直角三角形だけ
を考えていては三角形の性質を理解したことにはなりません。鋭角三角形や鈍角三角形まで考えて
すべての三角形について理解したことになるのです。
2. 何のために数学を学ぶのか
よく言われることです。「足し算、引き算ができれば十分じゃない、高校の数学は生活していくのに
必要ないと思う」数学が分からなくなると必ずこういう意見というか質問が出てきます。しかし、突き詰
めて考えたことがありますか、自分で考えたことはありますか、常に答えを求めて人に頼っていません
か、と言いたいです。何のためかは自分で考え自分で決め納得すべきことです。
それでもという人にヒントとして、次の考えを参考にしてください。
鳥が翼を、魚が鰭を手に入れたように、人間は頭脳を手に入れました。その特徴を生かすことが
人間であると考えられます。その頭脳によって創造されたものが数学です。
3. 数学は本当に必要なのか
それでもこだわりたくなる君に「数学のリアル」という本を紹介しましょう。桜井進 著 東京書籍
2008年出版 。数学が現代社会を支えている八つの物語です。たとえば「音・光・重さを感じる
仕組み log 」「あなたの位置は数式でわかる GPS」「ネットのセキュリティ 素因数分解」など。
数学が直接目に見える形で役に立っているわけではありません、しかし数学がなければここまで
文明が発展はしてきていません、ということがわかる本です。つまり今学んでいる数学がすぐに役
に立つことはありません、しかし、現代社会は数学無しには機能しないということです。社会の中
に組み込まれてしまっている人間は、まったく数学と縁を切ることはできないのです。
4. 数学は難しい
算数は易しかったのに。本当に算数は易しかったのですか、単に小学生の時は高い点数を取って
いたのに中学から取れなくなったからそう思うのではありませんか。計算ができることはそれほど難し
くは無いけれど、何故そうなるのか、何故そうやっていいのか、など考えたら簡単に答えられることは
少ないはずです。例えば、円の面積を計算するのに、3.14 を使いますが、何故 3.14 なのですか
とか、 1+1 は何故 2 で 3 ではないのですか、などです。これらは高校生でも簡単には答えられな
い難しいものです。これらのことを解き明かす1つの道が、数学の歴史を知るということです。
先人達がどのように考え数学を創り上げてきたかを知ることで答えが見つかることがあります。
本当は算数も難しいのです。
5. 数学の学び方
数学は他の自然科学とは異なり人間の頭の中にだけ存在しているものです。落ちる、壊れるという
物理の世界や、燃える、溶けるという化学の世界などに比べ目で見える現象に数学があるわけでは
ありません。数字すらないのです。鉛筆が1本あるじゃないか、と思われるかもしれませんが、その 1
という概念は人間の頭の中で考えているものです。
すなわち数学を学ぶということは頭を働かせるということなのです。自分の頭で考えて初めて数学が
存在し理解できるのです。しかし、頭の中だけで考えることはかなり難しいことです。そこで考えたこと
を表現するために、数字や文字、方程式、関数のグラフ、図形などを考え出し、分かりやすい工夫や、
きまりを作ることによってさらに発展したのです。
6. 理解したい数学
ほとんどの人が思っていると思います。しかし理解するためには基本の決まりと計算を覚えることが
不可欠です。苦手な人は「足し算ならできる」というのですが、こういう人のできる足し算は一桁の自
然数の場合だけで、分数や負の数の足し算は含まれていません。理解したいと思うならもっと真摯な
態度で数学と向き合わなければいけないと思います。自分ができないことをわざと茶化して誤魔化す
ような言動は理解したいという態度ではありません。
理解するための基本的決まりであまりいわれていないけれど大切なことは「省略」と「まとまり」です。
「省略」は、計算記号、( )、 1 の3つです。これ以外にもありますがこの3つをマスターするだけで計
算のミスを減らすことができます。「まとまり」はひとかたまりで考えるものは何で、どういう場合なのか
ということを判断できるようになることです。
7. 楽しい数学
楽しいとはどういうことなのか。遊び、ゲーム、の楽しさか、スポーツの楽しさか、芸術の楽しさか、学
問の楽しさか、ずいぶん違います。ワイワイがやがや自由に参加して休みたい時に休むという遊びの
世界を、他の楽しさと一緒にすることはできません。スポーツ、芸術、学問は地道な努力を重ね、技
術的に向上したり、分からなかったことを知るということで自分自身の達成感、満足感を得ることが楽
しいのです。またスポーツ、芸術は鑑賞するという間接的参加方法で楽しみを感じることもあります。
学問をすることに間接的な参加による楽しみはありません。数学は学問です。数学の楽しさを得る
ためには地道な努力しかありません。高校数学は学問を学習する段階ではありますが、学問の階段
を上がっていくことが実感できるものですそれゆえ、高校の数学に遊びの楽しさを望むのは間違って
います。
8. 数学は嫌い
小学生の低学年のころは算数が好きというのは多いけど、学年が上がるにしたがって嫌いになる
割合が増える。難しくなったとか、わからなくなったとか言いますがその本当の理由は考え方が難し
くなったからなのです。いくつもの規則が絡み合い、順に解きほぐさなければならないからなのです。
例えば計算も四則の規則は×、÷が先で+、−が後だとか、また分数計算は足し算引き算ではなく
掛け算が易しく、足し算、引き算は分母によってやり方が変わって難しいとか、それでいて割り算は
さかさまにして計算という具合に。また記号や符号が省略される場合があり、統一的な決まりとして
理解できるようになっていないのです。
順序つけた決まりを計算などに当てはめることは、論理的な考え方をしなくてはなりません。それが
難しいので嫌いになってしまうのです。
9. 数学は工夫しても
算数や数学を理解するための工夫が数多く考えられていますが、特効薬はありません。また理解
する力は生徒によってさまざまで万能薬もありません。興具(教具)も工夫され、ゲームなども様々
考えられていますが、どれもそこの部分ではうまくいっても、次のステップへ進むとうまく説明できな
かったり、違う分野では全く使えなかったり。さらに生徒によって違ったり、クラスによってうまくいか
ないこともあります。表面的に興味を引き付けても、本質的な理解は難しいのです。
数学は本質的なことでの理解が面白さを生み出し、さらに取り組んでいこうとする気持ちを作り出
しているのです。ではどうすればいいか、それは数学が実に巧く美しく作られているかを実感させる
ことです。つまり別な形で説明できるような規則を作れるかということを試してみることです。
10. 高校数学は一般化
具象、抽象、一般、厳密、これは小学、中学、高校、大学の数学は大まかに一言でいうとこう表せ
るのではないでしょうか。具体的な内容である小学校の算数のエッセンスを文字を使い抽象化した
中学数学、その表現されたものを様々な場合に利用、応用できるように一般化した高校数学。
鶴亀算、旅人算などいろいろな計算を未知数と等式で抽象化し表現した方程式。1次方程式や
連立方程式から2次方程式へ広げ、その一般的解法である解の公式。その発展としての高次方程
式と因数定理。図形としての三角形から取り出された直角三角形に成り立つ三平方の定理、その
発展として一般の三角形に成り立つ余弦定理。このようにいくつもの分野において一般化になって
いるのが高校数学である。
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